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喘息
​内科の病気

喘息(ぜんそく)

喘息、気管支喘息は一般人口の3~4%にみられる比較的多い呼吸器の病気です。 昔は子供の病気と考えられていましたが、最近は大人になってからでも発症する方が増えてきました。慢性的な疾患ですが、医学の進歩とともに、症状を軽く、悪化させない技術が開 発されてきました。

現在では、進行してしまっていても、治療によって健康な人と変わらない 生活を送ることは、それほど難しいことでなくなっています。しかし、「発作の回数が少なく なった」「時々発作が出るだけになった」など、少しの発作はしかたないと、あきらめている方 もまだいらしゃるのです。何度も発作を繰り返し我慢していると、気道が狭くなり、薬も効き にくくなります。喘息は、「発作を止める」治療から「発作をおこさない」治療へと進歩してい ます。

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気管支喘息とは

気管支喘息とは、気管支(気道とも言います)の粘膜に慢性的に炎症が起きる結果、気管支の内腔が狭くなり、気管支が様々な刺激に対して過剰な反応を起こし、その結果、咳や痰、呼吸困難などの症状が発作性に起き、この様な反応を繰り返す病気です。誘因・原因は様々ですが、わが国で最も多いのは、抗原となるタンパク質(アレルゲン)を吸入することで気管支にアレルギー・免疫反応が生じて発症するタイプです。この他に、運動や特定の薬剤を服用することで同様の症状を引き起こすことあがり、それぞれ運動誘発喘息、アスピリン喘息と呼ばれています。

気管支喘息はなぜ起こるのか

気管支喘息の原因である気管支(気道とも呼びます)の炎症は、様々な炎症性細胞と呼ばれる細胞によって引き起こされます。
私たちの身体は空気中の様々な物質を常に吸いこんでいます。多くの場合には、身体は免疫反応をおこさずにこれらをうまく処理しています。しかしこれらの免疫反応が過剰に起こってしまう方の場合、家ダニやカビ、スギなどの花粉、イヌやネコのフケなどに含まれるタンパク質を吸い込むと、それらは気管支粘膜に分布している抗原提示細胞に取り込まれて細かい断片に砕かれ、その細胞膜の表面にあるアンテナに提示されます。するとそれを見つけたリンパ球などの細胞が次々と粘膜組織にやって来て刺激され、活性化されてゆきます。
リンパ球は形質細胞という細胞を刺激して、認識したタンパク質の分子に対する抗体(IgE抗体)を産生します。作られたIgE抗体は、肥満細胞や好塩基球という細胞の膜表面に出ている受容体に結合します。この状態を、そのアレルゲンに「感作された」状態であると表現します。
感作が成立した状態で私たちが再び同じアレルゲンを吸い込むと、そのアレルゲンタンパク分子がIgE抗体に結合することで肥満細胞や好塩基球が刺激され、ヒスタミン、ロイコトリエンなどの物質を放出する結果、気管支が急に収縮したり、浮腫みを引き起こすことで気管支が狭くなり、呼吸した際にヒューヒューやゼーゼーするなど空気が通りにくく感じようになります。
これらの活性化された細胞はさらに様々な細胞を刺激し、気道の炎症を持続させ、悪化させてゆきます。気管支の表面を覆う上皮細胞のバリアの一部が破壊されてその下の組織がむき出しになるので、気管支はタバコの煙などの刺激に敏感になり、ちょっとしたことで咳や痰が誘発されたり、気管支が収縮するようになってゆきます。これを「気道過敏性」と呼び、喘息に特徴的な現象とされています。
このようにして、“気道の慢性炎症“が起こります。これが気管支喘息の正体です。
こうした炎症は、以前は可逆性、即ち治療で元に戻るものと考えられていました。しかし研究が進歩するとともに、ある程度炎症が持続してしまうと粘膜が厚くなり、元に戻らなくなることがわかりました。こうした気道組織の不可逆性の構造変化を”リモデリング“と呼びます。リモデリングを起こしてしまった気管支では、慢性的に空気の通過制限が生じているために、治療の効果が不十分になりやすく、日常生活にも支障をきたしやすくなってしまいます。つまり、気管支喘息の治療では、炎症をきっちりと抑えて、リモデリングの段階にまで進めないことが非常に大切になります。

気管支喘息の特徴

息をするとゼーゼー、ヒューヒューという音がする他に下記のような症状がありますが、強い発作になると、痰のからんだ咳、呼吸困難、チアノーゼ(顔色が青黒くなる)、意識障害などが見られますし、最悪の場合、死亡することもあります。ただし、喘息の症状は非常に多彩で、ゼーゼー、ヒューヒューいう音が聞こえない場合もありますし、痰をともなわない咳、咳が長く続くだけということもあります。風邪が長引いているだけと自己判断してしまうのは危険です。

  • 痰が出る

  • のどがイガイガする

  • 咳が出る

  • 息切れがする

  • 呼吸が苦しい

  • ちょっとした刺激で咳込む(ちょっと走る、階段や坂を昇る、大声で笑う、 ホコリやタバコ、におい、疲労やストレス)

  • 夜に咳、息苦しさで目覚めてしまう

気管支喘息は常に症状があるわけではありません。症状がなくても治ったわけではないので、治療を途中で止めてしまうと、症状が以前より悪化することもあります。また、喘息発作は、日中より朝・晩が多く、気圧が前日よりも下がる前線の通過する日に多く発症します。梅雨や台風の時期は注意が必要です。また、風邪をきっかけに悪化することも多いので早めに医療機関を受診しましょう。

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◇喘息カレンダー

​月ごとの注意事項を記載しています。

気管支喘息のコントロール

 

「発作を起こさない」ことが大切です。スピードスケートの清水宏保さんが喘息であることは有名な話です。彼がコントロールをはじめて5年、喘息を感じたのが、2~3回、発作らしい発作は、まったくないということです。うまくコントロールし、うまくつき合うことによって、運動ができるだけでなく記録への挑戦も可能なのです。症状により10年以上と長期治療になる場合もあります。医師とタックを組んだつもりになって、きちんとじっくり続けることが、結果的に早道になります。具体的には、発作の原因を取り除き、睡眠や食事などに関する日常生活の改善、薬を総合的にコントロールすることになります。

1. コントローラー

発作を止めるのでなく、気道の炎症を正常化してその維持を図るために、毎日使い続ける薬をコントローラー(長期管理薬)といいます。吸入ステロイド薬(ICS)*、テオフィリン製剤、長時間作用β2刺激剤(吸入、テープ)、抗アレルギー剤などがあります。症状がない時に使用することが多い薬なので、忘れてしまったりすることもありがちですが、自己判断で中止することは危険です。必ず医師と相談してください。

 

*吸入ステロイド薬(ICS)
コントローラーの代表的な薬です。ステロイド薬と聞いて不安に感じる方がいますが、もともと「ステロイド」は、体内でつくられるホルモンの一種です。ICSは、経口や注射でなく吸入なので、気道だけに作用し、経口ステロイド薬の1/100~1/1000の量で効果がえられ、副作用も少ないと考えられます。

2. リリーバー

発作を治療するため短期間使う薬をリリーバーといいます。短時間作用吸入β2刺激剤、ステロイド薬(内服、点滴)、エピネフリン皮下注射、アミノフィリン点滴などがあります。発作の時に使用する方法を医師に確認しましょう。発作止めばかり自己判断で連用するのは大変危険です。普段より短時間作用吸入β2刺激剤の使用頻度がふえているときは早めに相談して下さい。

 

3. 環境の整備

アレルギー反応がある方は、喘息発作の引き金になるの原因を取り除くことが大切です。禁煙、花粉、ダニ、ハウスダスト、ペット等のアレルゲン(アレルギーの元となる物質)の除去や軽減は、対策グッツなども進化しています。こまめに注意しましょう。運動自体が発作の原因となる方は、運動をおそれていると、体力が低下してしまいます。医師と相談しながら、発作のない時に、少しずつ運動量を増やしましょう。

 

4. ぜんそく日記

発作の程度、自覚症状(咳、痰、睡眠の度合いなど)、吸入や内服薬の種類や量、天気、などを毎日記録します。どんな時に炎症が悪化するかを把握することは、喘息の治療・改善に非常に役立ちます。ピークフローメーター*があれば、この値も記録します。当院に「ぜんそく日記」がありますので、ご相談ください。

 

*ピークフローメーター
呼吸するときの、瞬間にはき出すことのできる最大の息の速さを測定します。気道が狭くなってる場合は、数値は下がります。一日に何回か計り、変動の幅を記録することにより、症状の悪化や発作を正確に予測します。症状がなくとも炎症の度合いがわかるので、早く対処したり、無駄な薬を使用しないことも可能になります。

 

アスピリン喘息

市販の感冒薬の中にはアスピリン喘息といって喘息が誘発されるものも含まれていることがあります。風邪は、喘息発作を誘発することがありますが、薬には注意して、医師に相談してください。

妊娠と喘息

妊娠中の喘息発作は胎児に悪影響を及ぼすので、妊娠中であっても通常の治療をする必要があります。薬の服用を自己判断で中止するのではなく、主治医と相談しながら治療を続けていきましょう。